世代を超えて心を通わす。「ありがとう」や「ごめんね」。資産承継を機に言葉にしたい想い
資産承継は、財産だけでなく心も引き継ぐ機会
ご自身の人生の節目を迎え、資産の承継について考え始める頃かもしれません。資産承継というと、不動産や預貯金、株式といった目に見える財産をどのように引き継ぐかに目が行きがちです。もちろん、財産を滞りなく引き継ぐことは大切です。しかし、それ以上に大切なものが、世代を超えて引き継ぐべき「心の財産」ではないでしょうか。
私たちのサイトでは、資産承継を単なる手続きとして捉えるのではなく、家族の絆を深め、親御さんが大切にしてきた人生観や価値観、そして家族への深い想いを次世代に伝える尊い機会と位置づけています。
過去の相続で、家族間に残念ながら課題が残ってしまった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。自身の承継においては、お子さんたちが仲良く、家族の絆を大切にしてくれることを強く願っておられることと存じます。そのためにも、目に見えない「想い」をいかに伝えるかが鍵となります。
なぜ、「想い」を言葉にして伝えることが大切なのか
親が子を想う気持ちは、多くの場合、言葉にせずとも伝わっていると信じたいものです。しかし、人生の終盤で向き合う資産承継においては、これまで秘めてきた感謝や、あるいは謝罪の気持ち、そして未来への願いなど、心の奥底にある本当の想いを言葉にすることが、時に何よりも重要になります。
財産分与の方法だけを話し合っても、親がなぜそのように考えたのか、どのような人生を歩み、何を大切にしてきたのかが伝わらなければ、残されたお子さんたちは戸惑うかもしれません。親の真意が伝わらないことで、不信感や誤解が生じ、それが家族間の溝に繋がる可能性も否定できません。
例えば、「長男に家を継いでほしい」という想いだけを伝えても、その背景にある「この家には家族の多くの思い出が詰まっているから」「ご先祖様から受け継いだ土地だから大切にしてほしい」といった親の歴史や価値観が伝わらなければ、長男の方は重荷に感じてしまうかもしれません。また、他のご兄弟は不公平感を抱くこともあるでしょう。
伝えたい「言葉」は人それぞれ。素直な気持ちを表現する
では、具体的にどのような言葉を伝えれば良いのでしょうか。それは、「ありがとう」「ごめんね」といった、普段は照れくさくて言えない感謝や謝罪の気持ちかもしれません。あるいは、「これまで立派に育ってくれて感謝している」「お互いを思いやり、支え合って生きていってほしい」といった、お子さんの成長を喜ぶ気持ちや、これからの人生への願いかもしれません。
また、「私が人生で一番大切にしてきたのは、家族みんなで食卓を囲む時間でした」「この土地で、皆が笑顔で暮らしてくれるのが私の願いです」など、ご自身の価値観や人生観を語ることも、お子さんにとっては親御さんの人生を深く知る貴重な機会となります。
大切なのは、借りてきた言葉や立派な言葉を並べることではなく、ご自身の素直な気持ちを表現することです。完璧な言葉を探す必要はありません。心の中で温めてきた想いを、少しずつでも良いので、形にしてみましょう。
想いを言葉にするための具体的な一歩
言葉にすることが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いくつかの方法を試すことで、伝えやすくなることがあります。
- 手紙やエンディングノートを活用する: 直接口頭で話すのが難しい場合は、手紙にしたり、エンディングノートの一項目として書き記したりする方法があります。時間をかけて、ご自身のペースで想いを整理し、言葉にすることができます。
- リラックスできる場を選ぶ: 改まった場ではなく、家族みんなで食事をしている時や、お茶を飲んでいる時など、日頃のリラックスした雰囲気の中で、さりげなく話を切り出してみるのも良い方法です。
- 一度に全てを伝えようとしない: 一度に重い話をしようとすると、話す側も聞く側も負担に感じることがあります。何度かに分けて、少しずつ想いを伝えていくことも可能です。
- 家族の話を聞く姿勢を持つ: 一方的に伝えるだけでなく、お子さんたちの考えや気持ちを聞く時間を持つことも大切です。お互いの理解が深まり、より円満なコミュニケーションに繋がります。
- 専門家のサポートを借りる: 弁護士や税理士といった法務・税務の専門家だけでなく、ファイナンシャルプランナーやライフプランナーなど、家族間のコミュニケーションや想いの整理について相談できる専門家もいます。第三者を交えることで、冷静に話し合いを進められることもあります。
言葉が紡ぐ、未来への絆
資産をどのように分けるかという話合いももちろん必要ですが、その根底に流れる親御さんの深い愛情や、家族への願いを言葉にして伝えることは、お子さんたちがこれから先の人生で、親御さんのことを思い出し、家族として支え合っていくための何よりの財産となるでしょう。
言葉にすることは、時に勇気がいります。しかし、その一歩が、家族の絆をより強くし、未来への希望を灯す明かりとなるはずです。難しく考えすぎず、できることから始めてみませんか。あなたの温かい想いは、きっとお子さんたちの心に届き、世代を超えて引き継がれていくことでしょう。