世代を超える資産の智慧

円満な資産承継へ第一歩。家族に伝わる「わたしの資産リスト」の作り方

Tags: 資産承継, 資産リスト, 家族の絆, コミュニケーション, エンディングノート

資産承継、何から始めるべきか

ご自身の人生を振り返り、そろそろ資産の承継について考え始めようと思われたとき、多くの方が「何から手をつければ良いのか」と戸惑われるのではないでしょうか。法的な手続きや税金のことなど、難しそうに感じられるかもしれません。

しかし、資産承継は何も特別な専門知識がないと始められないものではありません。ご自身の資産状況を整理し、それを家族に分かりやすく伝える準備をすること。これが、円満な承継に向けた大切な第一歩となります。そして、この準備は単なる財産目録を作るだけではありません。そこに、ご自身の人生や家族への想いを込めることができるのです。

なぜ「わたしの資産リスト」が必要なのか

資産のリスト化は、ご自身の財産全体を把握するためだけでなく、将来、ご家族が承継手続きを進める上で大きな助けとなります。どこに、どのような資産があるのかが明確になっていれば、手続きがスムーズに進み、ご家族の負担を軽減できます。

また、資産の全体像を把握することは、ご自身の想いに基づいた分け方を考える上でも重要です。さらに言えば、リストを作成する過程で、ご自身の人生を振り返り、それぞれの資産にまつわる思い出や、なぜそれらを大切にしてきたのか、といった「想い」を整理する貴重な機会にもなります。

そして何より大切なのは、このリストがご家族間の不要な争いを防ぐ一助となることです。情報が不透明であることは、時に不信感を生み、家族間の関係にひびを入れる原因となり得ます。誠実に資産状況を伝え、そこに込めた想いを共有することで、ご家族は安心して手続きを進めることができるでしょう。

リストに含めたい「資産」の範囲

「資産」というと、預貯金や不動産、有価証券などを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、これらは重要な要素です。

これらに加えて、借入金などの「負債」についても正直に記載しておくことが大切です。

しかし、「世代を超える資産の智慧」のコンセプトであるように、承継すべきは目に見える資産だけではありません。ご自身の人生において大切にしてきた価値観、家族との思い出が詰まった品々、次の世代に引き継いでほしい考え方なども、リストと関連付けて記録しておくことをお勧めします。例えば、特定の不動産にまつわる家族との思い出や、なぜその株を購入したのかといった背景、大切にしてきた家訓など、物理的な資産に「想い」を添えることで、リストは一層意味深いものになります。

家族に伝わるリストの作り方と「想い」の添え方

リストを作る方法は、手書きのノートでも、パソコンのエクセルなどでも構いません。大切なのは、ご自身が継続して記録でき、そしてご家族が後で見て分かりやすいように整理することです。

単に項目と数字を並べるだけでなく、以下の点を意識してみてください。

  1. 正確に、かつ簡潔に: 専門的な評価額まで記載する必要はありませんが、金融機関名や不動産の所在地など、特定できる情報は正確に記載します。同時に、誰が見ても理解できるよう、平易な言葉で簡潔にまとめましょう。
  2. 「なぜ?」を添える: その資産を所有するに至った経緯や、それに対するご自身の想いなどを、短い言葉で書き添えます。例えば、「この家は、家族が一つ屋根の下で暮らした大切な場所です」「この預金は、〇〇の教育資金として貯めたものです」など。
  3. 愛用品や思い出の品リスト: 資産リストとは別に、あるいは関連付けて、ご自身の愛用品や家族との思い出が詰まった品々についてリストを作るのも良いでしょう。それぞれの品にまつわるエピソードや、誰に譲りたいか、なぜそう想うのかなどを書き添えることで、ご家族は単なる「モノ」以上の価値を感じ取ってくれるはずです。
  4. 保管場所を伝える: リストや関連書類(通帳、権利証など)の保管場所を、ご家族がわかるように伝えておきます。エンディングノートに記載しておくのも一つの方法です。

リストを「渡す」ではなく「共有する」

リストが完成したら、ご家族に「渡して終わり」にするのではなく、可能であれば、一緒にリストを見ながら話をする機会を持つことをお勧めします。なぜこのリストを作ったのか、そこに込めたご自身の想いを、改めて言葉にして伝えてみてください。

全てを一度に話す必要はありません。少しずつ、無理のない範囲で情報共有を始め、ご家族が疑問に思う点があれば、誠実に答えるように努めます。この話し合いを通じて、ご家族はご自身の状況を理解し、承継について共に考える準備ができます。それは、家族間の信頼関係を育み、将来の不要な争いを未然に防ぐ、最も有効な方法の一つです。

まとめ:リスト作りは、家族への「安心」という贈り物

「わたしの資産リスト」作りは、ご自身の財産を整理する行為であると同時に、ご家族への深い愛情を示す行為です。将来に対するご家族の不安を和らげ、「あなたは一人ではない、家族で協力して乗り越えられる」という安心感を伝える贈り物となるでしょう。

全てを完璧にこなそうと気負う必要はありません。まずは、書き始められるところから一歩を踏み出してみてください。そして、このリスト作りをきっかけに、ご家族と未来について語り合う温かい時間を持つことができれば、それは何より大切な「心の資産」の承継となるはずです。必要に応じて、専門家にご相談いただくことも、心強い味方となります。